Portland log 8

もうひとりのポートランドお友達、ローラには
今回は会えなさそうなんですが
私の好みを知っている彼女が、ここきっと好きよ!とおすすめを教えてくれました。


以前、私がすごく好きでしょっちゅう通っていたけれどもうなくなってしまったというベーカリー、
そこで働いていた人が
日曜日の10時〜14時だけ、パンを売っているというのです。
いわゆる、間借り営業というやつです。

それならばぜひ行かねばと
日曜の朝はここに行くと決めていました。

場所はセントジョンという街で
Ivyの家からはバスでも25分くらいかかるところです。

セントジョンは
ポートランドの中心地からはちょっと離れているんですが
ファーマーズマーケットも雰囲気がいいし
前にローラが教えてくれた“ベストベーグル in town” (ローラ的ポートランドNo.1ベーグル)もセントジョンだったし
大好きな古着屋さんもあったので
時々、来ていた街です。

もともとIvyの家も、ポートランドのダウンタウンからは
川ひとつ隔てて東側。
ポートランドってすごく京都っぽいなぁ〜と私が感じる理由のひとつでもあるんですが
南北に大きな川が1本流れていて
それが街を西と東に分けているんですね。
川の所々に橋があって東西の行き来ができて。
なんだか鴨川みたいじゃないですか?
で、Ivyの家は、川の東側で、北側。なのでNorth East というエリア。
京都で言ったら左京区です。

地域の雰囲気もまさに左京区に似ていて
チェーン店などは少なく、こぢんまりやっているベーカリーやコーヒーショップ、お店が
とても多いのです。私が東エリアが好きな理由です。
ダウンタウンのある西側には、用事がなければ行くことはあまりありません。
用事がある時しか四条に行かないのと同じ〜笑

その左京区から
バスでさらに25分北へ行った街がセントジョンなので
一乗寺から大原までパン買いに行く感じです。まさに!笑
彼が焼くパンの特徴的なところは、粉使い、だと思います。

もともと私が通っていたベーカリーも
パンだけでなくスコーンやビスケット、マフィン、ケーキ、クッキーなど
たくさんの種類の焼き菓子を作っていましたが
白い小麦粉、ほぼ使っていなかったんです。

そう聞くと、じゃあ全粒粉?ライ麦?と
それくらいしかパッと思いつかないかもしれませんが
もっと、いろんな粉があるんです。
スペルト小麦、バックウィート(蕎麦粉)、マルチグレイン(雑穀粉)、レッドフラワーなんてのもあります。
そんないくつもの粉を使って焼いているのがとても興味深く、そしておいしかったので
お気に入りだったのです。

とても楽しみにして向かうと
そう人も多くない静かな街なのに
バス停から歩く途中、1箇所だけ、長い列ができているのが見えました。
ここだとすぐにわかるほどの列でした。


こんな街はずれでやっているにも関わらず
こうして列ができるなんてすごいな〜と、まずびっくり。
私が並んだ後からも、どんどん人が来ます。

ベーカリーなんて、たくさんあるんですよ。
なのにわざわざ日曜の朝に、ここにパンを買いにくる。
そういう人の流れを作れるなんて、すごい。


どれもこれも食べてみたい気持ちを抑えて、、、
それでもホールのパンを2個、スコーンとクッキーと、調理パンをひとつ、
購入しました。

レジをやっていた女性は、パンを焼いている彼のパートナーで
彼女も前に通っていたベーカリーで働いていたので
“私、seastarに行ってたのよ“ と話しかけてみると
すぐに“覚えてるわよ!アニーとローラのお友達ね!” と言ってくれました。

うれし〜もう5、6年も前のことなのに。
パンも買えて、ぬくぬくな気持ちで店を後にしました。
 

空いていたら、コーヒーとスコーンで朝ごはんにしよう〜なんて思っていましたが
全然そんな雰囲気ではなかったので
歩きながらパクリ。

まだ少し温かかった玉ねぎとチーズのパンは
噛み締めるごとに粉の風味がして、しっかりしているのに固すぎず
程よいしっとり感。とてもおいしかったです。

そう〜これこれ、こういうの食べたかったんだよね〜!と
思わず言ってしまうパン。
家に戻ってからいただいたスコーンも然りで

そう〜これこれ!!と
納得の味と食感でした。

日本でも、普通の小麦粉以外の粉が
手に入らないわけではありません。
粉の種類に限らず、無農薬とか、生産地がどことか、粉にこだわろうと思えばいくらでも。
でも、こだわればこだわるほど価格も上がるし
小麦粉と全粒粉では
同じ小麦ですが同じレシピで作れるかと言うと
食感が変わるとか、おいしく作ろうと思うと注意しなければいけない点が出てきます。
単純に置き換えられるものではないんです。(と私は思っている、あくまで私の考え方です。)

そして、そういった粉の違いにまで興味のある人が
一体どれくらいいるんだろう、、、とも思います。
きっと大半の人が、おいしいお菓子、パンならそれでいい、と
言うんじゃないかしら。

私のレッスンでも時々、全粒粉やライ麦くらいは使えるかな、と
それらを使うことに着目して作ったレシピを課題メニューにすることがありますが
習ってくださった方々も
結局お家でよく作るのって、普通のやつなんだよね〜となるかもしれません。
もちろん、それが悪いことでは全くないし
もっと粉に興味持ってくださいよ!と言いたいわけでもありません。

ただの、私の好みです。笑
ただ昨日感じたのは

どれくらいの人が興味を持ってくれるかわからない分野というか、
そういうところに“それでも自分はこれがいいと思ってるから“ という強い信念を持って続けているということが
素晴らしいな〜ということです。

京都の三条会商店街の中に“パンスケープ” というパン屋さんがあります。
京都の方はご存知かな?
私、そこがオープンした時から大ファン。
当時、その近所で働いていたのもあって
しょっちゅう買いに行っていました。
パンスケープさんは、お店にあるすべてのパンに自家製粉の全粒粉を使っているんです。
パンによって、全粒粉の割合は変わるんですが
どれもとてもおいしく
全粒粉のパン、と聞いて多くの人が思い浮かべるであろう固いパンとは全然違います。
私はここの食パン、食事パン、バターロール、クロワッサン、イングリッシュマフィン、どれも
抜群においしいと思っています。

すべてのパンに自家製粉の全粒粉を使うということを
15年も前に始められたんです。すごい。本当にすごい。
変わらずずっと、尊敬の気持ちを持ち続けていて
今は遠くて頻繁には行けなくなりましたが、それでも1、2ヶ月に一度は伺うようにしています。

こうやってすごいな〜と思う人やお店に出会うと
自分の仕事についても考えてしまいます。
私はちゃんと、自分の信念を持って、その通りに進んでいけているのかな、と。

常に初心忘れずやっているつもりでいても
こういう機会が、私をハッとさせてくれる。

これもまた旅の醍醐味というか、大事にしたい経験なのです。