きのう最後に書いた、サワークリームアップルパイの思い出。
私の前の職場である、さらさ焼菓子工房。
ここでは、オープン当初からこのサワークリームアップルパイを
メニューとして出しておりました。
だいたい、初めて来たお客さんは"ふつうの"アップルパイの方を買っていくんですが
サワークリームの方を気に入ってくれたお客さんは
そればかり買うようになる、
ヤミツキ系(笑)のアップルパイ。
まぁ、他にあまり売っていないお味なのかも。
さらさ焼菓子工房と同じ商店街の中にあるナチュラルサイクルで働いていらっしゃった岸本さんも
サワークリームアップルパイのファンのひとり。
岸本さんはさらさの社長さんです。
思ったことをはっきりとおっしゃる人、というイメージがあったので
どのお菓子も、最初に食べてもらうときは
”何て言われるかしら…"とドキドキしたものです。
初めてサワークリームアップルパイを食べた岸本さんは
”キャシー、あれねぇ~~おいしかったよ~~"と
とても気に入ってくれた様子でした。
それから、よく工房にもお茶をしに来てくれたのですが(当時、販売のみではなくカフェスペースがあったのです~)
そのたびに、サワークリームアップルパイを注文。
途中からは
”キャシー、いつものあれね!"とおっしゃるようになり、
打ち合わせなどでお客さんを連れてきてくれる時も
その方の好みとか、何が食べたいとか一切聞かず、笑
”いつものあれ”を二つ、注文する岸本さん。
お席に持っていくと
”キャシーのこれねぇ~おいしいんだよ。食べてみてよ。"と
自慢げに言ってくれたのでした。
なつかしいな。
さらさの焼菓子工房がオープンしたころ、
やはりとても忙しくて、やることが多くて
わたしは残業が常になっておりました。
とは言っても、楽しんでやっていたので
あまりしんどいとは思っていなかった…はず!笑
で、ある日。
もう夜も遅い時間に、ひとり片づけをしてそろそろ帰ろうかと思っていた時です。
ちょうど、お店の前を岸本さんが自転車で通りました。
"おつかれさまです~"
と声をかけると
そのまま通り過ぎて行かれるかと思いきや
自転車を止めてこうおっしゃいました。
”キャシー、いつもいつも、キャシーが遅くまでひとりでがんばってるの、
僕はちゃんと知ってますよ。いつもおつかれさんです"
その言葉を聞いた時、
私はなにかがわぁ~~~と身体の奥の奥のほうからこみ上げてきて
とっても、とっても
うれしかったのです。
こんなにがんばってて、誰が見ていてくれるんだろう…
それって、誰もが感じたことのあることなんじゃないかと思います。
そして、誰も見てくれていないんじゃないかと思った時の
ハァ・・・・という、なんとも言えない虚しい気持ち。
それも、感じたことがあるんじゃないかと。
落ち着いた心で考えると
誰かが見てくれているとか、そうじゃないとか
そんなことは関係ないんですよね。
ただ、自分がやるべきこと、やりたいことをやって
自分で納得できれば、それでいいのですから。
でも、がむしゃらで、必死になっているときは
"ちゃんと見てるよ。"というその一言が
元気がなくなり枯れそうになった花を
一瞬で、みずみずしい姿にしてくれるのです。
これぞ、言葉の力、だと思います。
あの時の岸本さんの言葉を
私はその後、何度も思い出しました。
感謝の気持ちでいっぱい。
岸本さんがあのとき、さらりと私にかけてくれたこの言葉を
誰かにかけてあげられるような人間に、なりたいな~と思うのです。
そんな、サワークリームアップルパイと岸本さんの思い出。